・・・・・・・・・・・・



時刻は17:30過ぎ。

今日は金曜日ということもあり、予定のある者は、残りの業務時間を気にしながら、仕事の仕上げに勤しむ時間帯。

少し離れた席に座る未来君を見れば、先日須賀君にもらった大量な資料を熱心に読み込んでいるようで、こちらも今日は残業を覚悟した方が良さそうだ。

超過勤務に入る前に、冷たいカフェオレでも入れようかと席を立ち、室内の端に備えられている、給湯室に向かう。

『あ』

定時に近いこの時間に、誰もいないと思っていた室内には、先客がいた。

咄嗟に出てしまった声に反応し、座って背を向けていた落合さんが振り向く。

『お疲れ様です』

我が社特有の、比較的広めに作られた給湯室。

ちょっとした休憩時に利用できるように備えつけられた、給湯スペースの対面側に並んでいる、木製のカウンターデスク。

窓側に近いその右端に座る落合さんは、相変わらずのスーツ姿で、艶のあるストレートな髪も、配属時に挨拶した時と一緒で、一つに結っている。

『お疲れ様…えっと、ここで仕事、してるんだ…ね』

つい数時間前、紗季と話したことが引っかかり、動揺が声色に出てしまったのかもしれない。

誤魔化すように、差し障りの無い会話をしょうとして、明らかに挙動がおかしくなる。