『うん?最近、関君忙しくて、仕事以外で会えてないけど…』

そのまま正直に答えれば、ますます訝し気な視線を送ってくる。

『ここだけの話、あっちの二人こそ、怪しいって”噂”聞いたんだけど?』
『…え』
『しかも、今回はあの関君の方が、彼女の優秀さに惹かれてご執心じゃないかって』

紗季の聞いた話によれば、日頃あれほどの容姿を持ちながら、常に女性社員とは適度な距離感でしか接しない関君が、彼女に対しては違うのでは?ということらしい。

『サポーターだから接する機会が多いのは当然だと思うけど、何せ彼女の方が関君相手に全くと言っていい程動じてないのが珍しいから、そう見えちゃうのかもね。それにあの二人が一緒にいると、こう…なんかビジュアル的にしっくりくるっていうか…』
『…しっくりこなくて、ごめん』
『あっ、違うよ、朱音がどうって話じゃないからね』

自分の失言を取り繕うとする、紗季の慌てぶりに思わず笑ってしまう。

『別に良いよ、最初からそんなことわかってたことだし』
『朱音』
『それに、関君が落合さんのこと信頼してるのはわかるもの。彼女、本当に凄いから。仕事だって正確で速いし、関君が指示する前に終わってることも多いし…ね』

話しながら、自分は関君にとって、彼女ほど何もできていないことに気が付いてしまう。

考えてみたら、入社した時からずっと同じ課内にいながらも、関君の業務の助けになるようなことは一度も無かった気がする。

『でも、関君が選んだのは朱音でしょ?』

紗季の声に、いつの間にか足元に落ちていた視線をあげ隣を向けば、快晴の青をバックに紗季の確信めいた顔。

『なんて顔してるのよ』
『私…変な顔してる?』
『してるわよ、餌を取られたひな鳥みたいな顔してる』
『何よソレ』
『もっと関君の恋人として、自信持ちなさいよ』

最も私に足りないものを指摘され、ぐうの音も出ない。