『…落合が自信ないなら見るが?』
『いえ、自信はあります…ですが、一応目を通して頂いた方が…』
『心配しなくていい。もしなにか不備があれば、俺が責任をとる』

きっぱりと断言する関君に、あまり感情を表に出さない落合さんが、ほんの少し頬を赤らめ、笑みを浮かべたような気がした。

『はい、ありがとうございます』

二人の会話はそこで終わり、落合さんは軽く会釈をして自分の席に戻っていく。

半分彼女の方に向いていた関君は、今度こそ椅子を正面に戻すと、目の前の席である私と偶然目が合ってしまった。

『何だ』
『ううん、別に』
『何か言いたそうだな』

関君は、閉じていた自分のパソコンを開きながら、聞いてくる。

『関君、落合さんのこと、信頼しているんだなって』
『このひと月、落合の仕事をみてきての判断だ』
『優秀なんだね、彼女』
『いつまでも俺達が四六時中付いてるわけにはいかないだろ。独り立ちしてもらわなきゃ困る』
『それは、まぁそうだけど…』

『関、悪いが手が空いてるなら、A2の会議室来れるか?』

会話の途中で主任に呼ばれ、関君は立ち上げ途中だったパソコンを閉じると、直ぐに席を立つ。