海外事業部は、我が社でも選りすぐりの人材が集まっているエリート集団がいる部署で、3年目の関君がその会議に参加するのも凄いことだけれども、一年目の落合さんまで面通しするなんて、彼女はどれだけ期待されているのだろう。

『いいか、倉沢と簑沢はいつまでも通路でじゃれあってないで、さっさと仕事しろよ』
『主任、私達じゃれあってなんていないですよ!』
『そうか?まぁ新人とサポーターが仲が良いのは一向に構わないが、ほどほどにな』

意味ありげに笑いながら去って行く主任の後ろを、無言でついていく関君。

その漆黒の冷ややかな目線が、私を射抜く。

『…』
『ち、違うから…ね』

思わず口から出たフォローは完全にスルーされ、スッと視線が外れると、そのまま落合さんを連れて去っていく。

やましいことなど一切ないのに、この罪悪感は何だろう。

もちろん、関君がいちいちこんなことで、妬いたりなどしないのだろうけど…。

『凄いな…アイツ』
『え?』

隣に立つ未来君を見上げれば、神妙な顔で去った3人を目で追いかけている。

いや…3人ではなく、その視線の先は、同期の落合さんだけに向けられているのかもしれない。