『やっと梅雨明けか…』

呟いた関君に被せるように、再び稲光と共に、轟く雷鳴。

瞬間びくりと身を縮まらせるも、やっぱりそこかしこから聞こえてくる女子社員達と同じようには、可愛らしく怖がれない。

『フッ…結局、怖いんだな、お前も』
『べ、別に怖いわけじゃないし』

強がって見せた視線を泳がせて、何気なく階下にむければ、そこは少し広めのピロティで、誰でも自由に使用できる談話スペース。

そこでは、さっきまで窓側のテーブルでミーティングをしていたらしいグループの女性が2度目の雷鳴に戦き、一緒いる男性陣が、彼女の為に窓から離れた内側の席に移動しているところらしかった。

”すみません…”と恐縮する彼女に対して、移動しながらも『しょうがね~なぁ』とか笑いながら、デレまくる男性達。

確かに階下の女性は華奢で可愛らしく、女性の私でも守ってあげたくなるほど、儚く見える。

『関君…男性的には、こういう時って、素直に怖がる女の子の方が可愛げあるもの?』

つい、頭に浮かんだそんな疑問が、口を次いで出てしまう。

『…なんだ、そう見られたいのか』
『それは、まぁ…もちろん、誰にでもってわけじゃないけど…』

”好きな人には特別可愛く思われたいでしょ”なんて、本人の前で言えるわけがない。

『そうみられるために怖がるなら、もはや素直とはかけ離れるだろうな』

関君の口調は、明らかにくだらないこと聞くなと言わんばかりで、てっきりそのまま終わるものだとばかり思っていた回答は、それこそ意外な続きがあった。