関君の方こそ、”冗談の一つも言わない先輩なんてつまらないものよ?”と、助言したかったけれど、口にしたらその10倍くらいの返しがありそうなので、あえてスルーすることにした。

『もしかして、わざわざ探しに来てくれたとか?』
『そんな暇あるわけないだろ、俺はこれから、この階にある商品開発部と会議だ』
『あ~そうなんだ…わっ!!』

一瞬、眩いほどの稲光が光る。

すぐ横の手摺の先に広がる、大きなガラス窓の外で、間を置かずにズシリと鳴り響く雷鳴。

同時に近くの執務室から、女性達の甲高い悲鳴が聞こえてきた。

『びっくりした、今の結構大きかったね』

手摺に手をかけ、外を眺めれば、窓ガラスを打ち付ける雨粒の量が増え、雷鳴と共に、また一段と雨脚が強くなったような気がした。

『…意外だな』
『ん?』
『こういうの、大抵女は騒ぐものだろ』

関君は先ほど悲鳴が上がった執務室の方を一瞥してから、こちらに視線を戻す。

『別に雷が好きなわけじゃないけど…ああいうのって、なんかちょっと恥ずかしくて』
『へぇ…みかけに寄らず、大人なんだな』
『みかけに寄らずって…それどういう意味よ?』
『そのままの意味に決まってる』

こちらの質問に適当に答えながら、手摺に片肘をかけて、ジッと雨雲の様子を眺める関君の隣で、自分もつられるように窓の外を見やる。