…遠くからだんだん近づいてくる雷鳴。

社屋ビル7階、他課の執務室が並ぶ前にある、半開放型の通路で立ち止まる。

手摺から先が下階から上階まで吹き抜けになっている、その大きな窓ガラスから望む景色は、今日も生憎の雨模様。

窓ガラスを打ち付ける雨粒はますます強さを増し、まだ昼過ぎにも拘らず外は薄暗く、嵐の様相。

7月も後半だというのに、今年の梅雨はなかなかの厄介者だ。

『倉沢、ここにいたのか』

窓から視線を戻すと、通路の先からこちらに向かって歩いてくる、関君の姿。

通常の堅苦しいスーツ姿と違い、夏期の間クールビズで許されている紺のチノパンに白のポロシャツという、比較的ラフなスタイル。

いつも通りのクールなフチなし眼鏡も、その服のせいで、いくらか柔らかな印象になり、すれ違う女子社員が、つい振り向いてしまうのも、当然なのかもしれない。

それはまるで、ランウェイを歩いているモデルのような格好の良さだ。

『…何、笑ってる?』

目の前まで来ると、持っていた書類で口元を隠した私を、訝し気に見下ろされた。

『ううん、何でも…あ、私に何か用だった?』
『いや、俺じゃない。課内で簑島が、お前を探してた』
『あ~…じゃ、もう少し隠れておこうかな?』
『おい』
『冗談だよ』

直ぐに笑って否定すれば、『後輩をからかうな』と真顔で叱られる。