『関君、未来君今、落合さんのこと”那智”って言ってたよね?』
『…ああ』
『えっ!もしかしてあの二人って。あ、それじゃ、未来君がこの前追いかけた彼女って…そういうこと!?』
『……ハァ』

返事の代わりに呆れたような溜息を吐かれる。

『関君、知ってたの?』
『普通気付くだろ…むしろ今更気付くとか、鈍いにもほどがあるぞ』
『嘘…全然知らなかった』

…そうだとわかれば、いくつかの不可解だった謎が解決していく。

あの日、夏祭りの会場に彼女が現れたのも、どうしてあの時泣いていたのかも。

それにあの時、関君が未来君に放ったセリフの意味も。

『落合はともかく、簑島は態度見てれば、駄々洩れだろ』
『…私、落合さんに後で謝らなきゃ』
『まぁアイツらのことはどうでも良い……それより』

言いながらカウンターの近くまでやって来ると、関君は椅子には座らず、何故か私の目の間で立ち止まった。

『…何?どうしたの??』

両手を広げて、高めのカウンターに私を縫い付けるように手を置く。

『関君?ち、近いよ…?』

触れてはいないものの、囲われた腕の熱を感じて、こちらは再びハイチェアに座らざる得ない。

『さっきのは一体どうういうことか、説明してもらおうか?』
『…さっき?』
『簑島に、髪を触らせるとか、どういうつもりだ』

明らかに怒ってるような口調で、責められる。