紗季は、少し複雑な表情を浮かべ一人ごちる。

『…何だろう？ちょっと嫌な予感する』
『そう？』

紗季が何故だか不安そうな顔を見せる中、こちらは先の見えなかった出口に、光が射したようで、心なしか気が楽になった気がした。

ちょうど、雨粒が窓ガラスを打ち始め、道行く人が傘を差し始める。

『あ…降ってきちゃったかぁ』
『小降りの内に、会社戻らなきゃね』

その様子を眺めながら、晴れ晴れとした気分で、解け始めたリンゴのシャーベットに再び口をつけた。