『そういえば、未来君の方こそ、あの後どうだったの?追いかけた人、間に合った?』
『あ~まぁ、それは…ご想像にお任せします』

そう濁しながらも、にやける顔を見たら、その結果は容易に想像がつく。

第一週明けの未来君は、わかりやすいほどにご機嫌で、何も知らない人まで『彼女でも出来たか?』と、声をかけるほど。

それでいて、さっきみたいにはぐらかすものだから、もはや”上手くいきました”と公表しているようなものだ。

『僕のことより、朱音さんの方こそ、公表しないんですか?』

別のことに意識を取られて、その質問の派生元がなんだったか一瞬わからなくなり『え、何を?』と聞いてしまう。

『周りの皆さんに、関さんと付き合ってることを、ですよ』
『しないしない…あ、だから未来君も誰にも言わないようにね』
『僕は別に良いですけど…朱音さんは良いんですか?関さんあんなにモテるのに』
『言ったところで、相手が私じゃ誰も信じないでしょ』
『そんなことないですよ。っていうか男の立場から言わせてもらうと、公言するメリットもありますし』

何故か未来君は、まるで自分事のような物言いをする。

『…メリット?』
『そりゃ、決まってるじゃないですか。”彼女”に、近寄ってくる男避けです』
『なるほど。でも、それこそ私には必要なさそうだけど』
『ほらソレです!朱音さんも、自覚が無さ過ぎですよ。もう少しこっちの身にもなってもらわないと…』
『ん?こっちの身?』
『えっ、あ!いえ、な、何でもないです!』

熱く語る未来君にキョトンとすると、何故だか急に慌てだし、誤魔化すようにアイスコーヒーをすすり上げる彼の耳は、真っ赤だった。