駅舎を出て、駅前の小さなロータリーを過ぎ、【海まですぐ⇒】の看板がある路地を曲がると、海岸道路まで繋がっている、未舗装の細長い道に出た。

両脇には洒落た小さなカフェや釣り具屋、浮き輪などを売ってる懐かしい店構えの雑貨店が並んでる。

陽が完全に落ちるまでには、まだ少し時間がありそうだけれど、ここも大きな祭りの一部となっているからなのか、ところどころに掲げられた祭り用の提灯には、既に明かりが灯り始めていた。

『この辺も祭りの範囲に入ってるんだね』
『地域の祭りとはいえ、海岸を囲むエリア全体らしいからな』
『そういえば、未来君のお誘いを断ったのに、同じとこに…って、良いのかな?』

結局、関君が計画していた場所も、未来君の地元で開催しているこの夏祭りだったらしく、あの時関君が誘いを断ったのも、こういうことだったのだと後で知った。

『別に問題ないだろ。この時期、地元の人だけじゃなく結構な人がこの祭りに来るだろうし、ここに来るのに簑島の許可が必要な訳じゃない』
『澤井さん達も会場に来てたりしてね』
『さぁな。この祭り自体、毎年万単位に客が来るらしいから、いたとしても会う確率は限りなく無いだろ』
『…それもそっか』
『なんだ、安心したって顔だな』
『べ、別に』

正直、関君が言うようにホッとした。

平日の仕事帰りならまだしも、さすがに、休日に関君と二人でいるところを見られたら、たちまち噂どころの話じゃない。

未だ”恋人”の自覚の薄い自分には、やや荷が重すぎることになりそうで避けたいところ。