『朱音さん、僕、地元で結構有名なパワースポットの穴場知ってるんで、そこも皆さんに案内しますよ』
『へぇ…面白そうだね』

どうやら話の流れから、誘われたのは”私だけ”というわけじゃなく、関君や落合さんも一緒に、ということのようだった。

それならば、別に断る理由もないかもしれない。

関君との約束は日曜日だし、もし土曜日も会えるなら、二日連続で関君に会えるチャンスかもしれない…なんて楽観的に考えていたら、

『簑島』

背中からやけに明瞭な、関君の声が聞こえた。

『悪いが俺は両日予定が入ってるから、行けそうにない』
『そうですか。残念ですが、それなら仕方ないですね。朱音さんは…?』
『えっと、私は…』
『倉沢。お前も確か、土日予定入ってたよな?』

振り向き、関君を見れば、真向いの席で両手で組んだ手を顎に乗せ、ジッと見つめられる。

”断れ”

そう聞こえた気がした。

『朱音さんも、予定ありですか?』
『あ~うん、そう…そうだった。予定入ってたんだった』
『そっかぁ…残念ですね』
『せっかく誘ってくれたのに、ごめんね。また今度ね』

子犬がしゅんとしたように、残念がる未来君。

そんな彼を前に、きっと”また今度”…なんてある訳ないだろうなと、ひそかに確信していた。