一見不愛想ながら、それは明らかに未来君の仕事に対しての誉め言葉だった。

自他ともに厳しい関君が、珍しく自分の仕事を評価してくれたことに、気落ちしていた未来君の気持ちが、グッと引き上げられる。

『はいっ、ありがとうございました』

分かりやすい程、満面の笑みで喜びを表現する未来君に、つられてこちらも笑みが零れてしまう。

『そういえば未来君、失くしたUSBのことだけど、もし黙っているのが心苦しいなら、何かの時に私の方から、須賀君に言っておくから心配しないで』
『そうですね。それは、すみませんが、お願いします』

見つからなかったUSBは、高度なセキュリティがかかるものだったらしく、万が一残っていたとしても、データが外部に流出することは無いことが、不幸中の幸いだった。

今回のことは、未来君にとって、いい経験になったに違いない。

ううん、未来君だけじゃない。

私にとっても、いろいろと勉強になった。

『そうだ!朱音さん、週末の土日、空いてませんか?良かったら、地元でちょっと大きな祭りがあるんで、一緒に行きませんか?』
『え?』
『僕の実家も地元店として出店するんで、今回のお詫びに是非ご馳走させてください』

喜々とした未来君の突然の誘いに、一瞬戸惑ってしまう。

職場の、周りに同僚がいる中での純粋な誘いに、何の意味も無いことは明らか。

たまたま近くで聞いていた澤井さんなどは、ラッキーとばかりに『ウッチ―誘って行こうかな』と、早速未来君のご実家の出店場所などを聞き出してる。