『どうした?早くしろ』



目の前に差し出された大きな手をみつめ、息を飲む。

その手の持ち主は、常に隙を見せない同じ課の同僚且つ同期で、今は(一応)恋人でもある、関諒太。

今日はお互いの時間が取れて、久しぶりに休日デート。

大型ショッピングモールの入り口で、今からまさにそれがスタートしようという時。

『関君、手…繋いでも良い…かな?』

つい1分ほど前に、なけなしの勇気を振り絞って、そうお願いしたのは私の方。

関君は、一瞬眉がピクリとしたような気がしたけれど、これといった動揺も見せず、ただ黙って自分の手をこちらに向けて差し出してくる。

てっきり強引に繋いでくれるものだとばかり思っていた私は、関君と関君の手を交互に見ては、戸惑いを隠せない。

『え~っと、これは…もしかして、私の方から…と?』
『当たり前だ』

関君は、そんな私を冷ややかに見つめてから、小さく息を吐く。

『理由を言った方が良いなら言うが…』
『いっいえ、大丈夫です』

即座に否定する。

だって、理由などわかりきっているから。