「理子ちゃんが望むなら、お揃いのものをプレゼントするよ」

灰田は微笑み、皿に置かれていたフルーツタルトを理子の口へと運ぶ。

「…嬉しい。直己さん」

フルーツタルトを一口で口に納め、灰田の指が唇に触れるか触れないかのところでそっと身を引き、それと同時に懐かしいJポップが流れ「はい、みなさま、フリータイム終了です」とアナウンスが流れた。

灰田は自分の指を舐めて、微笑むと「じゃあ、また後でね、理子ちゃん」と席を立ち、元の席へと歩いて行った。
財布と同じ下品なロゴマークが並んだバッグを抱えて。

「下の名前呼ぶなんて、結構なアクセル踏んだね〜?無理したんじゃない?」

亜由奈がおしぼりを渡してくる。
口に含んでいたフルーツタルトを吐き出し、唇を優しく拭いた。

「まさかあんなに距離を縮めてくるとは思わなかった。最近の年上男子ってあんな感じなの?」

口元を隠し上品さを装いながら会話を続ける。

「余裕あるフリして下心丸出しだったよね〜。私もこのタイプの街コンは初めてだからさ〜」

亜由奈はワイングラスを傾けながら退屈そうに返事をする。

「げっ、また、飲んでるし。バレても知らないよ」

「19歳も20歳も変わんないって」

理子は亜由奈が書いた自己紹介カードに目を落とす。

『あゆな 23歳 OL』

「詐欺師」

亜由奈は理子の自己紹介カードをコンコンコンと指差した。
『りこ 25歳 事務』

「お互い様」