17世紀、花の都パリ。

街を歩く人々は皆幸福な顔をしている。笑い声や鼻歌が混じり合ってパリの街は活気に満ち溢れている。

と、どこからか可愛らしい歌声が聞こえてきた。人々は思わず足を止めこの美しい歌声の主は誰だろうかと辺りを見回す。


『––メロディメロディ麗しの歌、

メロディメロディ自由にそよぐ私のメロディ

空高く響き囁く木陰に、メロディメロディ

マイメロディドゥパリ−−』


「お嬢さん!何を歌っているんだい?」

1人の青年が思わず声を掛ける

「ボンジュール!ムッシュー、パリの歌よ、この、パリの歌です!」

キラキラと瞳を輝かせて声の主、クリスティーヌ・ダンエは軽やかな歌声を街中に響かせた。

おおパリ、なんて美しく素敵な都だろうか
人々は頬をほころばせながらまた歩み始めた。






「あら?シャンドン伯爵よ!」

「まあ、シャンドン伯爵じゃない!」

若き乙女たちがぱっと頬を染めてその主を見上げる。
通りの向こうから歩いてきたのは街1番のお金持ちでありシャンパンで業を成したフィリップ・ド・シャンドン伯爵だ。若く見目麗しい青年であり、社交界の花である。


「やあお嬢さん方、お揃いで。」

「まあシャンドン伯爵ったら、次はいつ私とデートして下さるの?」

「ちょっと!次の約束は私よ!ね、フィリップ!」

「まあ!ファーストネームで呼ぶなんて図々しいわ!」

「やあやあ、次は君たち2人を僕のサロンに招待するからさ」

ね、と言いながら1人の女の手を取り軽く口づけする。

黄色い悲鳴を後ろにしてフィリップは歩き始めた。やれやれご婦人方のお相手をするのも一苦労だと内心苦笑いを浮かべつつ



と、どこからか歌声が聞こえてきた。思わずはっとしてフィリップは立ち止まる。



なんて美しい歌声なんだ。



この声のご婦人はどこにいるのだろうと辺りを見回す。すると向こうの通りで人々に囲まれて嬉しそうに歌っている少女が目に入ってきた。


少女の元へ自然と足が向く。フィリップは歩き始めた。