神様の初恋

「兄上、ありがとう!」

月夜はそう言い、結界の通り道を通って学校の敷地内に足を踏み入れる。その途端、重い空気がのしかかってきた。

「うっ……。霊気がすごいな。まるであの世だ」

月夜が校舎内に入ると、一斉に霊たちが襲いかかろうとする。それを力を使って除霊しつつ、月夜は優愛がどこに連れて行かれたのかを探った。

「黒沼は屋上にいる!」

術を使ってそれを特定し、月夜は急いで屋上へと走る。もしも優愛に何かあったらと思うと、ドクドクと胸が嫌な音を立てて騒ついた。

「優愛……!」

優愛の優しい微笑みを思い出し、月夜は足を早めた。



月夜が勢いよく屋上のドアを開けると、そこには黒沼と手足を縄で拘束された優愛がいた。

「ずいぶん早いんだな」

黒沼は楽しそうに言い、地面に転がされている優愛は「月夜、この人は危険です!離れてください!」と叫んでいる。月夜の答えは一つだった。

「好きな子を守れないほど、僕は弱くなんかない!!」