神様の初恋

「優愛、三限目と四限目は家庭科だって張り切ってたな」

太陽が言い、月夜は昨日「調理実習が楽しみ」と微笑んでいた優愛を思い出す。優愛は料理を作ることが好きだ。料理を作る時にはいつも楽しそうな顔をする。月夜が顔を赤くすると、「やっぱりお前、優愛のこと好きなんだな」とからかわれた。

「で、でも！このことは内緒にして！優愛との恋なんてできるわけないし……」

優愛は優しさから神社に居候することを許してくれたのだ。自分など恋愛対象ではないだろう。

「まあ、どうするからお前が決めろ」

太陽はそう言って立ち上がる。もうすぐお昼ご飯ができるだろう。月夜も立ち上がり、家の中に向かおうとした。刹那。

何者かの気配を感じ、月夜と太陽は足を止める。そして太陽が「上だ！」と叫んだ。次の瞬間、どこからか弓が飛んでくる。

「ッ！」

月夜は光で盾を作る。そして何とか矢を防いだ。

「当たらなかったか……」

残念そうな声が響き、月夜と太陽が声のした神社にはえる巨大な楠の上を見上げると、黒い着物を着た編み笠をかぶった男性が立っていた。