とある町には小さな神社がある。三重県にある伊勢神宮や島根県にある出雲大社のように有名なわけではない。しかし、その町に住む人たちからは大切にされ、夏祭りで神社の巫女が神楽を披露したりするのだ。

朝の五時。夜はまだ明けていないというのにその神社の境内を掃除する男子の姿があった。黒髪に青い目をして、黒い着物に黄色い袴をはいた可愛い顔立ちの男子だ。その手にほうきを持ち、一生懸命掃除している。

「ふあ〜……。やっぱり朝早いと眠いなぁ。でも、掃除はしたいし……」

男子の名前は星影月夜(ほしかげつきや)。この神社に数年前から居候させてもらっていて、人に会った時には十五歳と言っているがその正体は神だ。

「月夜」

掃除をする月夜に誰かが話しかける。その声を聞いただけで、月夜の胸が高鳴った。横を見れば、腰まで伸びた黒髪を白いリボンで結んだ巫女衣装を着た女の子がいる。この神社で巫女をしている福森優愛(ふくもりゆうあ)だ。歳は十六歳。