天脈変換。

　それは、人脈変換、地脈変換と続く北極大陸共同体の文明が生み出した究極のエネルギー変換だった。

　北極大陸共同体において、人脈とは人の血液や神経パルスの流れを差し、地脈は大地に流れるマントル流、電磁波、海流や気流などの流れを差す。

　そして、天脈とは惑星や恒星間を流れる重力や光の流れを差した。

　天級魔導強化兵として唯一作られた嵐は、天脈変換を単独で行える自律兵器だった。

　北極大陸共同体の文明では、光と重力を同一の物として考えられており、光重子と言うものが、理論上存在していた。

　嵐はその光重子を直接扱える兵器だった。

　その扱いはデリケートであり、自律兵器としては不完全な存在だった。

　その不安定で危険な兵器を安定させるために、開発者が考えたのが、制御の主となる安定した人格を外部に用意し、嵐を従として、主を守るために嵐を使役するシステムだった。

　嵐は主を守護するために、存分にその力を振るう。

　つまり、嵐は、天脈変換を麗希を守るために発動した。

　天脈変換により、光重子を全身に纏った嵐を中心に排他結界を展開する。

　排他結界を中心に、光重子が荒れ狂い、限定熱塊となる。

　嵐は、麗希を守るために最低限の天脈変換を行った。

　それは半径４８２メートルの光柱となった。