「貴様は俺がなんとも思ってないと思うか?」

 いつもはクールで任務に忠実なグレッグが、陰に篭った声で言った。

 その視線に、佐織は自分が殺されると錯覚した。

「いいか、手塩にかけて育てた部下を失ったんだ。この落とし前は必ず着ける。だが、俺達はEIGの企業兵だ。任務はきっちり片付けてやる。その後だ。奴にも、そして、こんな命令を下した奴らにもだ」

「了解しました」

 佐織は自然と敬礼をした。

「いいか、先ほども言ったとおり、今作戦におけるログは全て破棄しろ。この会話も含めてだ」

「了解」

 佐織は、拭ったジェルが乾かぬ間に、通常のオペレーションシートに着いた。

「くそっ、まさか生きてる遺跡だったとはな。全身に呪紋が施してある兵器だったとは!」

 グレッグは、指揮卓を思い切り右拳で叩いた。

 その痛みは部下を失った事に比べれば大した事でもない。

「魔導強化兵か、ったく、ファンタジィだぜ。引き上げだ」

「了解しました。あの子はどうなったんでしょうね」

「大丈夫だろ、恐らくな。目撃者の抹殺は無理だ。あんな凄い守護天使がついてんじゃよ」

 激しく振動する海底を離れ、指揮ユニットは自走し、九重島海域から離れていった。

 やがて光柱は消失し、島に巨大な湾を残した。