弾道ミサイルは一度発射されると止めることが出来ない。

 システムが自律ということは、ほぼハックは不可能に近い。するにしても時間が足りない。

 問題は、発射体制にあるミサイル発射装置の位置だ。

 発射されるとして、どのくらいの時間的余裕があるのか。

 ハックツールによる攻撃は行っているが、時間稼ぎにもなりそうにない。

 チームの退避命令を発動するかしないか、それが重要だった。

 指揮ユニットのソナーが海面近くで爆破音を感知。

 その直後、ミサイル発射音を確認した。

「チーフ」

「佐織か。今こちらでも確認した。全員に退避命令を出せ」

「了解」

 佐織と同じ海底に着床している指揮ユニットで指揮をしているチーフのグレッグが命令を下した。

 佐織は、全員即時退避を示すコード00を発動した。

 だが、そのコードが届く前に、サンディたち五人のモニターが光と共に途切れる。

 地鳴りと共に大地を貫き、目映いばかりの光柱が建物を吹き飛ばした。

 数秒遅れてユニットに振動が伝わる。

「何だ、何が起こった?」

 グレッグは佐織に情報整理を促した。

「高熱源体が発生中、原因は不明です」

 サンディたちのモニタ回線が全て切れ、指揮端末のマルチディスプレイには島内や海上に設置したサイバードローンからの情報が入ってきていた。