佐織は、膨大な情報衝撃によって、二秒間情報麻痺してしまった。

 即座にシステムの稼動状況を再把握する。

 二秒間のログが記憶野に展開する。

 案の定、警備システムに対するリアルタイム補正に一秒以上遅れていた。

 研究所の警備システムはあの少年、九重麗希の所在を一秒以上見失っていた。

 これは、警備システムのコアにとって、環境情報を疑うのに充分な事態だった。

 入力される情報に疑いを持ったセキュリティは最悪の事態に確信を持ち、今まで使われていなかっデバイスを起動し、何かを送信していた。

 そこまでログを読み取ったとき、研究所のシステムネットワークのハード群を再検索させていたツールから答えが返ってきた。

 どうやら、警備システムが起動させたデバイスが、例のノードを利用したようだった。

 そのお陰で、ネットワーク上に新たなハードウェアがマウントされた。

 ハードウェアのスペックと稼動状況が表示された。

「これは・・・なんでこんなものが、仕掛けてあるのよ。ここのシステム設計者はまともじゃないわね」

 それは、海中発射型ミサイル発射システムだった。

 収められているのは、短距離弾道ミサイルを改造したものだ。

 搭載されいる弾頭は、小型の地中貫通弾頭。

 高空まで垂直上昇し、弾頭部を切り離し、姿勢制御システムで目標まで垂直降下。

 弾頭はロケットモーターで更に加速し、超音速で地上に着弾。その後、遅延信管により目標の地下深くまで侵入して爆発する。

 そして、すでにミサイルは発射体制にあった。

 警備システムに施設破壊の選択は用意されていたが、実際の手段はハードウェアを含めて確認出来なかった。

「それがこのミサイルって訳ね」

 CSで呟くが、ミサイルのシステムは完全な自律型で、ノードには一方的に稼動状況が送られてくるだけだ。