それは、永い眠りからゆっくりと起きた。

 海底ケーブルからの起動コマンドによって、システムを自律展開。

 ハードウェアの状況をチェック。

 各部異常無し。

 目標の変更無し。

 最終確認のため、警備システムコアに向け、動作状況のログを送信した。

 そのまま、システムにマウントされる。

 それは、九重島沖にある岩礁に擬装されたミサイルサイロだった。

 サイロ内には、全長12メートルの対地ミサイルが一基収まっていた。

 ミサイルの弾頭は、遅延信管を搭載した、対地下施設攻撃用の物だった。

 目標は研究所の地下サーバルーム。

 研究所の最下層であり、そこで爆発すれば、敷地の構造上、研究所一帯が崩れる。

 サーバルームは、麗希たちがいる螺旋状の地下通路の中心にあり、その衝撃で、通路は全て崩れる構造になっていた。

 警備システムコアが、最終コマンドを送ってきた。

 このコマンドを送ってきたと言う事は、警備システムコア自体がネットハックを受けてどうしようもないということを判断したと言うことだった。

 ミサイル発射システムは、その時点であらゆる外部コマンドをシャットアウト。

 モニターログだけを警備システムコアに送信しつつ、ミサイル発射準備に入った。

 これでシステム上、ミサイル発射を止めることは出来なくなった。

 ミサイルの最終安全装置が解除。

 擬装岩礁が爆発ボルトで吹き飛び、サイロの防水蓋が現れる。

 圧搾空気がサイロ内に一気に充填される。

 その圧力で、ミサイルが放水蓋を打ち破り、サイロから飛び出して、そのまま海面に飛び出す。

 その瞬間に固体ロケットモーターに点火。

 ミサイルは遥か天空へ飛翔した。