「マクス、次弾いけるか?」

 サンディが嵐の様子をモニターしながら、聞く。

「レールの融解が激しいが、発射は可能だ。弾体の装填は完了」

「コンデンサ充電完了。入力繋げます」

 キムが報告する。

「次弾発射」

 マクスは、照準はそのままで、発射した。

 弾体は、一発目が作った弾道を通り、そのまま、結界に捕まっている一発目の弾体に衝突した。

 ほぼ静止していた一発目の弾体が、ゆっくりと結界内に進み、ぽとりと落ちる。

 その穴を埋めるように二発目の弾体が、防御結界に速度を食われつつも、嵐の右掌が描く三重螺旋の紋に飛び込んだ。

 その時点で、地脈変換が完了した。

「ザッハ、シン。今よ」

 サンディの指示とともに、今まで地に伏せていた二人が起き上がり、ザッハは前から、シンは後ろから嵐に迫った。

 嵐はその動きに対応できないでいた。

 ザッハは身を屈めて、嵐の足元へタックルを仕掛け、シンはナイフを抜き、後ろから嵐の首を取りに行った。

 麗輝は起き上がりながら、ナイフを抜いたシンの動きを見ていた。

 嵐は、シンの動きまで気付いていないようだった。

「嵐、危ない!」

 麗輝は嵐とシンの間に割って入った。

 シンのチタンとウーツ鋼のハイブリッドブレードのナイフが跳ね上がり、麗輝の左腕を肘の関節で斬り飛ばす。

 声にならない悲鳴を上げて、嵐の背にぶつかる。

 シンの速度は止まらず、そのまま麗輝の血に染まる嵐の背から首筋を斬り付けた。

 ザッハも嵐へのタックルと同時に、右手で抜いたハンドガンを嵐の左脇腹に押し付けていた。

 嵐の物理防御結界は、全て、右手の先に集中され、全身が無防備だった。

「これでお終いだ、化け物め!」

 ザッハは、躊躇なく引き金を引いた。

 .45ACP弾が発射される。

 弾頭がマズルフラッシュと同時に亜音速で嵐の皮膚に達する瞬間、半身を麗輝の血潮で朱に染めた嵐は、天脈変換を発動した。