嵐は、急激な地脈の偏りで、その投射物を感じていた。

 だが、スタングレネードによる音と閃光を完全に防げず視覚と聴覚が役に立たなくなっていた。

 更には、身体制御の呪紋が外部からによる人脈のオーバーフローで一時的な麻痺を起こす。

 嵐は、避けられないと判断した。

 また、直接的な人脈が切れた麗輝が意識を取り戻して、身体を動かしたため、左肩から落としてしまった。

 本能的に麗輝を目で追うが、網膜が焼けていて、直接見ることは出来ない。

 前方に集中するため、視線を戻す。

 辛うじて防御結界の呪紋が起動。

 ほぼ同時に、内周壁を抉って、弾体が嵐に届く。

 プラズマの尾を引いた弾体は、嵐の手前で防御結界に捕まった。

 超音速で飛来した弾体の運動エネルギーを地脈変換して、結界が取り込んでいく。

 しかし、地脈変換速度が間に合わず、弾体はゆっくりと結界に侵入していく。

 嵐は、スタングレネードで焼かれた網膜を急速再生しつつ、弾体を睨む。

 天脈変換まで、あと少し、この高速飛翔体の運動エネルギーを取り込めれば、発動できるだけの地脈を得られる。

 防御結界の密度を一点に絞って上げる。

 まだ弾体の勢いは止まらない。

 麻痺したままの右腕を左手で支えながら、強引に弾体へと伸ばす。

 人脈のオーバーフローによる麻痺は、回復しつつある。

 これなら、いける。

 高密度の地脈変換によって、プラズマの輻射熱で上がっていた通路内の気温が、急激に下降する。

 右掌の呪紋が活性化して、空間に三重螺旋の紋を編み上げる。

 嵐の全能力が、一点に集中する。