「コンデンサ充電完了」

 キムは、インジケータを確認して言った。

「照準システム仮接続、初弾装填完了」

 マクスは、その巨大な砲を両腕で下げるように構えて、言った。

 それは、砲といえるほど洗練されたスタイルはしていなかった。

 それもその筈だ、元々砲ではない。

 基本は二本のレールの電位差で弾体を射出する電磁加速砲と同じ構造ではある。

 それは、弾体を遠方へ射出するための物ではなかった。

 高速で打ち出された弾体で、目の前の物を破壊するために作られた電磁破砕槌だった。

 元々は、研究所内の金庫室の扉を開くために用意された代物だ。

 ここの金庫室は、システムから物理的に切り離された機械式の扉で守られていて、マクス、キム、シンの三名は、そこを開くためにサンディたちとは別行動をとっていたのだ。

 その電磁破砕槌の入力電流を上げ速度表皮効果による頭打ちぎりぎりにまで初速を上げていた。

 湾曲する通路の先で、銃声と暴発音。

 さらに大音響とともに閃光が走る。

 ザッハのスタングレネードだった。

「マクス、照準同期完了よ。マーカーに合わせたら発射して」

 サンディからの囁きがマクスの視覚野に赤い三角のマーカーとして飛び込んでくる。

 即座に二重のマーカーを合わせる。

 湾曲した通路の内周の壁に照準が合う。

 その向こうに奴がいる。

 マクスはそのまま引鉄を引いた。

 その質量の殆どがプラズマ化した弾体が、高速で射出される。

 内周壁を抉り、嵐に直撃した。