二秒で全弾倉を撃ち尽くす。

 嵐は、物理防御結界を展開。全ての弾頭が、空間に描かれた結界に搦め捕られた。

 だが、ほぼ1点に注ぎ込まれた弾丸は、通常弾の質量、フレシット弾の速度、炸薬弾の爆発により、質の違う運動エネルギーによって、二秒で結界を突破した。

 複雑に絡み合う結界による空間の歪みは、一発の炸薬弾の侵入を許してしまった。

 嵐は右腕の駆動制御を加速させて、侵入してきた炸薬弾を掴み取った。

 手の中で爆発。

 思ったより爆発が小さかったのは、その殆どの運動エネルギーを地脈変換して取り込んだからだった。

 が、その瞬間、嵐の知覚が乱れた。

 更に、右腕の駆動系に麻痺が発生。

 嵐は原因の判断がつかないまま、敵性体排除の為、一気にザッハとシンとの間合いを詰めた。

 二人は既にアサルトライフルのマガジンを交換していたが、バレルが加熱して、オートセーフティが掛かっていた。

 このままチェンバーに弾丸を装填したら、弾丸が熱で暴発してしまう。

 シンは近付く嵐に対してライフルのストックを振り上げた。

 嵐の右手が伸び、ストックの一撃が上がりきる前に、シンの顔を覆った。

 シンのバイザー越しに、掌の呪紋が青く光る。

 嵐は、取り込んでいた運動エネルギーをそのまま解放する。

 破裂音と共に、シンの身体がのけ反り、そのまま倒れる。

 そして、延ばした右腕越しに、嵐の視線はザッハを追っていた。

 その暗く沈んだ瞳にザッハは自分の写り込んだ姿を見た。

 その自分に向かって、銃口を向け、手動で強引に弾丸を装填、そのままトリガーを引いていた。