それは、ゆっくりと思考を開始した。

 それまでは、完全な反射防御動作で動いてた。

 最優先事項は自己の保守と起動キーの保護だった。

 起動キーを確認。だが、生命レベルが低下中。

 起動キーの生命停止は、人脈で繋がっている自己の再停止に繋がる。

 機能停止状態からの復帰は、地脈からの計測では判別出来なかった。

 正確な計測には天脈との繋がりが必要だったが、起動直後の現在では、天脈との繋がりもままならない。

 起動キーとの人脈を通し、生命レベル低下の調整を試みた。

 肉体の欠損部分は、予備のマテリアルを充填し、人脈を通して、活性化した。

 意識レベルが僅かに回復する。

 更に個別コードを振動知覚から認識した。

 それと同時に二つある疑似脳の一つが機能を始める。

 低レベルの意識が自分の名を嵐と認識した。

 それが機能を始めた疑似脳のメモリーに推論展開し、記憶野にシナプスパターンが決定される。

 無垢な意識が、目覚め、光学知覚で抱きかかえている起動キーの姿を人脈上の情報としてでは無く、嵐として実体確認した。

 人脈情報から起動キーの個体情報が重なる。

 九重麗輝、と言う個体名と身体特徴が表示され、それが、嵐の意識形勢に取り込まれた。

 人脈が安定して交換され、地脈へのアクセス回路が次段階に解放された。

 認識範囲内に、敵対的な個体を二体確認。

 麗輝はこのうちの一体の放った微小飛翔体に貫かれて負傷していたようだ。