「手はあるわ」

 サンディは、あの少女が銃撃を受ける時の映像を解析しながら言った。

「やはり、奴が動作にはいる前に、身体の刺青が一定パターンで光っている」

「なるほど、あの刺青が何らかの制御システムって訳だ」

「あれに干渉出来るなら、奴の動きを制限出来るかも知れない」

「だが、どうやって干渉するんだ」

「手持ちのハックツールでやってみる」

 サンディは戦術ハックツールを立ち上げながら言った。

「おいおい、あんなわけの判らない奴に、通じるのかよ。

大体、どうやって通信ラインを通す気だ」

「この映像を見て」

 サンディは先ほどの対峙した時の静止画を送った。

「右の首筋よ」

 そこに、親指大の灰色の装置が付いていた。

「こいつは・・・医療用のワイヤレスインプラントか」

「何かの調査で埋め込み手術をしたみたいね」

「なら可能性はあるな」

「佐織、バックアップは出来そう?」

〈そちらのアタックと同時に5秒だけ支援出来るわ〉

「充分。ザッハそっちは?」

「いいぜ。後ろの連中も来たようだ」

 ザッハは銃のモードを3点バーストにし、マガジンを全層に切り替えた。

 これで、1層から3層の弾丸が1度の連射で射出される。

「マクス、キム、シンの3名到着した」

 体格の良いマクスが、ザッハに並んで言った。

 他の2名も並ぶ。

「よし、全員揃ったわね」

 サンディは即席の戦術ファイルを4人に転送した。

「全く、あんな奴がいるなら、重火器が欲しかったな」

 マクスも情報共有で、敵の様子を知っていた。

「こんな場所じゃ重火器なんて邪魔なだけよ。

その代わり、得意なトラップをお願い」

「了解。

キム、準備だ。シンは予定通りザッハにつけ」

「はいよ」

 小柄な東洋人のキムは、彼の背負う大きめのバックパックを降ろすと、中身を開けて準備を開始した。

「了解した」

 シンは無表情に答え、ザッハの後ろについた。

「行くぜ、相棒」

 ザッハはシンに言うと、ゆっくりと前進した。