サンディとザッハの銃口は、少女に向いていた。

 全ての銃弾は、少女のかざした右手に握られていた。

 予備動作が、認識出来なかった。

 ザッハの炸薬弾も爆発することなく、少女の右手からこぼれ落ちた。

「ザッハ、戦術コード13」

 サンディは言いつつ、マガジンを第3層にしたまま、更にフレシット弾を少女にばらまき、左手で手榴弾を投げた。

 投げたと同時に2人はホールから退避、通路を駆け戻った。

 佐織からの情報支援で、こちらに向かっていた残りの3名がこの地下に降りてきているのを確認していた。

 戦術コード13は、後退しての増援との合流、その後反撃を意味していた。

 ザッハも機械的にコードに反応していた。

 後方で、手榴弾の爆発音。

 銃弾を片手で受け止める相手に対人手榴弾が効くとは思えないが、少年の方は普通の人間だ。

 先ほどの少女の行動からして、少年を守る行動に出る可能性が高い。

 それならば、時間稼ぎとして、充分だろう。

 大きな螺旋状の通路を戻りつつ、サンディは、ホールに置いてきた偵察用サイバードローンの動作チェックをした。

 まだ反応がある。

 周囲にワイヤレスポートの通信波を感知。

 その状況を情報支援している佐織に送った。

 即座に佐織からのヴォイスメールが返ってくる。

〈こちらでも確認したわ。

 ドローンの方には直接通信ラインを繋げられないから、そこで中継して頂戴。

 5分持ちこたえて〉

 ノンリニアの音声情報として記憶野に展開するヴォイスメールは、聞く必要が無いので認識が高速だが、多用されると海馬にストレスが溜まるので、サンディは好きでは無かった。

「了解。ザッハ」

「了解。ここで足止めすりゃいいんだな」

 ヴォイスメールに添付されて、増援の3名の位置情報の解放キーが届いた。

 サンディとザッハのシステムに、3人がマウントされた。

 統合管理室から通路に降りてきている。

「問題は火力だが、どうするよ」

 ザッハはマガジンを第3層にセットし直して、ホール側を狙った。

 この狭い通路では、大火力は落盤に繋がる。

 かと言って、手持ちの通常火器では届きもしない。