それとも、と、麗輝は思った。

 自分がここに来ることが前もって決められていたとしたら?

 祖父の言っていた遺跡は、島の北側にある島を発見したときに建てられた祠の洞窟のことで、

ここは生前の父親が別の理由で、自分を連れてくることにしていたのではないのか。

 ポインタで無意識のうちに蘇生プログラムのモニタウインドウを手前に持ってくる。

 この部屋で蘇生という言葉が当てはまるのは、この壁に埋まった少女のことだろう。

「へぇ、ランって言うのか、この娘」

 少なくとも父親はそう呼んでいたらしい。

 プログラムは、最終段階で止まっていた。何か決定的な要素が欠落しているため、それ以上作業が進まなかったらしい。

 麗輝は、モニタから目を上げ、嵐の顔を見た。

 そのまま端末を避けて、目の前に立つ。

 自分とあまり背格好は変わらない。

 壁に埋まっている分、彼女の顔は少し見上げる位置にある。

 右手を彼女の頬にそっと宛てようとしたとき、防衛システムが起動、部屋に銃撃音が轟いた。

 そして、麗輝の背中から一発のフレシット弾が胸を貫き、嵐を埋めている壁で止まった。