空間の中央正面。

 その壁に、身体の半身が埋まり込んだ、全裸の少女の姿に、息を飲んだのだった。

「彫刻かな?」

 まるで温かみの感じられない青白い肌にそう呟いたが、

壁の周りをとりまくスキャナー群や、少女の身体に取り付けられた電極などから、

ただの彫刻ではなさそうだった。

 麗輝は瞼を閉じたままの少女の顔に見取れながら、

ゆっくりと少女に近付き、

その近くにある端末を無意識に復帰させた。

 端末が作業中のファイルアイコンをモニタウインドウに展開した。

 モニタに目を移すと、いくつかの単語が飛び込んできた。

『北極大陸における呪紋テクノロジー』

『「嵐[RUN]」蘇生プログラム』

『呪紋による電子制御法』

『呪紋制御による雷電アーキテクチャ』

『呪紋解析プログラム』

 いずれも書きかけのテキストや実行中のアプリケーションだった。

 使用者名は九重達輝。

 麗輝はそれで理解した。

 ここが、ここが祖父の言っていた遺跡ではなく、父親の研究室であることを。

 しかし、麗輝のIDがこの部屋に登録されているのが、理解出来なかった。

 父親の研究室とはいえ、仮にも九重電脳技研のトップシークレットがある場所なのだ。