「畜生、この扉だけやけに頑丈だぜ」

「そんくらいで止めときな、ザッハ。

この扉、外見は他と変わらないけど、中身はグレードAAAの防護扉だ。

この建物ごと吹っ飛ばしても残ってるよ」

「じゃあ、どうするんだよ、サンディ。あのガキはこん中にいるんだぜ」

「大丈夫だよ。

建物の構造データじゃ、この部屋は生命維持装置付きで、完全に密閉されている。

この扉以外の出口はない。

今、佐織に頼んで、この部屋のネットハックを優先してもらってる」

「でもよう、そんなことしたら、MPUパワーが足りなくなって、

システムを騙していられなくなるんじゃないのか?」

「なぁに、大丈夫さ、ほんの二十秒ぐらいバックグランド処理でなんとかなるさ。

こっちは最新のネットハックチップを持ち込んだんだからね」

 そんな話をしている内に、サンディのヘッドマウント端末に、

島近海の海底で全感覚オペレート中の佐織からヴォイスメールが届く。

「どうしたの?佐織」

〈どうやってか知らないけど。

中の坊やが部屋のシステムを回線から物理的に切り放したわ。

扉の電磁ロックも単独で動いてるみたいだから、ウェブから直接アクセスできないの〉