「挨拶なんて、先生ぐらいでいいよ。俺にはもうしなくていい。どうしてもっていうなら、まあいいけど……。あと自分にとっての当たり前を、人にあんま押し付けんじゃねぇぞ?」
「あっ……。はい」
ムキー、なにこれ。
あたしが間違っていたの!?
せっかく挨拶の大切さだって教えたのに。
まあ、確かにあたしも見過ぎていたと思うけれど、そんなに嫌な目をする必要があるの?
あたしもあたしで、何『はい』なんて言っているのやら……。
「ゆりあ!」
いつの間にか、愛菜は教室の中に入っていた。
愛菜の机を見ると、カバンが置かれてあってまだ来たばかりだということがわかる。
「あれ、愛菜おはよ」
「おはよう……っていうか、こっちに来て!」
愛菜は、いきなりあたしの腕を掴んで廊下に出た。



