男の人たちは、どこかへと全速力で走り出してしまった。



「大丈夫だった……?」



あたしは袖川さんの肩に軽く触れながら、話しかけた。


やっぱり袖川さん、怖かったよね。
黒目がちな目に溜まった涙が、溢れ出しそう。



「あ、うん! 大丈夫、なんにもされてないから」



袖川さんは、ホッと息を吐いてからそう答える。


……でも、可哀想に。肩に触れただけでも、袖川さんが今でも震えているのがわかった。その震え具合が大きければ大きいほど、袖川さんは恐怖を感じていたってわけだ。



「ありがとう、星野さん、水瀬くん。それから、久保田さんと健二も」



「いや、俺はなんもしてない」



高畑くんは、チラリとも見ずに言った。



「うん、わたしも見ることしかできなくってごめんね……?」



「ううん、来てくれてありがとう。こんなに大勢で来てくれるなんて思わなかったよ。多ければ多いほど、やっぱりあたしとしては安心だから」



手を振りながら、そう答える袖川さん。


星野さん、水瀬くん、久保田さん、健二……。


当たり前、なんだけどね?
この中で一番袖川さんと付き合いが長いのは、高畑くんだし、あたしが止める権利もないんだけど……。


呼び捨てにしてるせいかな?

なんだか、すごく違和感を感じる……。