俺の宝物は、お前の笑顔。


「ゆりあ、今日の学校どうだった?」



夜、バラエティ番組を見ているとコーヒーをいれたママが来た。



「ママ! 今日、席替えがあったんだ」



「あら、そうなの! 隣の席は誰?」



「えーっとね、まだ一度も話したことのない男の子」



一度も話したことのない、という言い方はちょっと違うかな。


でも、今日は『よろしく』くらいしか言ってないし、無駄話をするということでもない。


しかも話しかけたのは今日が初めてなので、あながち間違いじゃないかもしれない。



「ゆりあ、まだ話したことのない子がいたのね」



ママが、茶色い瞳を少し大きく見開かせた。



「まだ、高校生になってから半年も経ってないよう」



「とはいいつつ、ゆりあは親しくない子でも笑顔で話しかけられるじゃない」



「うーん……そうなんだけどさあ……」



実を言うと、ママの言う通り。
幼稚園の頃からあたしはフレンドリーな性格で、これまで同じクラスの人には全員話しかけることもできていた。


だけど、愛菜と一緒にいる時間もたくさん作りたいので、高校生になってからまだ話したことのない男子もいる。