ほら、やっぱりだ。

そりゃあ、よくムッとした表情だって見せてきたから当然か。



「でも、そんな時間も……なんだかないと寂しいの。あたし、高畑くんにイライラする時間さえ必要になるほど、好き」



ゆりあの顔は、これまでに見たことないくらい赤く、そして切ない顔をしていた。


その赤く切ない顔は、俺の鼓動をさらに高鳴る素となっていく。


は……?
俺に対してイライラする時間が必要?


本気で言ってんのか?


信じられないことを聞いちまったけれど……。


そう言ってくれる姿が……やっぱり、誰よりも愛おしくて、好きだ。



「じゃあ、俺のこと下の名前で呼んで」



「けん……じ」



ゆりあの唇が、むずむずと動いている。


俺は辺りを見回した。


……誰もいないか。


もう、あいつに“俺の幼なじみ”なんて言わせない。
俺が、“俺の彼女”と言ってやる。


俺は、ゆりあのそのむずむずと動いた唇を、自分の唇で止めてやった。