俺が呼びかけると、その外国人みたいな顔をした女子はゆっくり振り返る。



「高畑くん」



スマホの操作をやめて、顔を上げるとその女子はやっぱり星野だったことがわかる。



「お前、こんなとこで何やってんだよ。1人?」



くるくるした茶色い髪をサラリとなびかせながら、星野は首を横に振った。



「ううん、今パパとママがおみくじ結びに行ってるの。あたしは、大吉だったから持って帰ることにしてて、今ここでパパとママ待ってるんだけど……」



そう言いながら、星野は俺の持ってるみくじに目を落とす。



「あれ、高畑くんもなんだ」



そう言って、ふわっと微笑む星野はなんだかいつものはしゃいでいる感じと違うなと思った瞬間に俺の胸がきゅうっと何かが詰まったような気がした。


笑顔が太陽の光に照らされて、余計にキラキラと光っているように見える。



「突っ立ってないで、隣座ってもいいよ」



星野にそう言われて、気がつけば俺は隣に腰掛けていた。
星野は、いじっていたスマホをバッグの中に入れた。

バッグを触ると、キーホルダーとなってついているアイボリーの小さなクマのぬいぐるみが小刻みに揺れる。


星野は、そのクマの頭をそっと撫でながら、ふふっと笑った。



「このクマね、愛菜とおそろいで買ったんだあ。色々あったけど、あたしはアイボリーで愛菜はピンク」



……愛菜って、そうだ、あの久保田 愛菜のことか。


俺は全然女子のことを下の名前で呼ばないから、『苗字を覚えればいいや』という精神で学校生活を過ごしているから分からなかった。



「へぇー」



ぬいぐるみや可愛いキーホルダーの話をされても、正直俺はこう答えるしかできない。