初詣ということで、おちおち寝ていられなかった。


正直、めんどくさい気持ちが強いけれど母親が早く早くとうるさいので、俺はグダグダ言っている暇が1分もなかった。



「健二、早く!」



「今準備終わった」



「真一(しんいち)はー?」



「支度できたー」



俺の6歳年上の兄貴の真一も、支度を終えたようだ。



「なあ兄貴。そんな格好でいいのか?」



兄貴は、なぜか薄めのコートを着ている。
寒がりの兄貴なら、もうちょっと厚めのがあったはずなのに。



「別に。寺からはそんな離れてないから、いいよ」



兄貴は、細い縁のメガネの鼻当てを押しながらそう言った。


寺へ行って、みくじを引くと俺だけ大吉だった。親父は吉、母親と兄貴は小吉。


みくじをみくじ掛けへ家族が結びに行っている間、俺は暇を潰そうと座れる場所を探した。


あたりを見回すと、ベンチに、ベージュ色の可愛らしいダッフルコートを着た女子がスマホをいじりながらベンチに座っていた。


あの茶色い髪、二重まぶたでモデルのような整った顔立ち……。



「星野?」