「音葉さんって乗り物に弱そうだよな。なんてたって深窓のご令嬢だし」


「乗り物酔いした音葉さんを優しく快方してあげたいな、そうだな、どこかふたりきりになれるところに行ってさ」


あ、いけない。またぼんやりしてしまっていたけれど彼の声にハッとして我に返る。


デートって言葉が聞こえてちょっとドキッとしたんだ。


「音葉さんをおんぶして遊園地を出ようとするんだけど、恥ずかしがり屋の音葉さんは降ろしてって言っちゃってさ、顔を真っ赤にして、可愛いだろうなあ」


さっきから、玲生くんはひとりで話している。どうやら、私とのデートを想像しているみたいで。


でも、この妄想ってほっといたらいつまで続くんだろう。


そして終着点はどうなっちゃうことか……。


まったく、暇さえあれば私をからかって変なことばかり言うんだから。


うーん。 


いちいちとりあっていたら、キリがない。


私はそんな甘い想像に簡単に浮かれたりしませんからね。


と言いたいところだけど、免疫の無い私はこの年下小悪魔の発言に簡単にドキドキさせられてしまう。


これって、デートに誘われているのかなって思わず考え込んでしまいそう。