慌てて言い訳しようとしていたら、保健室のドアが再びガラっと開いた。


そしてつかつかと入ってくる足音。


ため息交じりの低温ボイス。


「おまえらまた。ちょっと目を離すといっつも抱き合ってるよな」


「直政くん」


彼は、ベッドに横たわってくっついていた私達をあきれ顔で見下ろす。


「今度こそ、混ざりたいでしょ、直政」


「もう明日香ちゃんたら」


彼はいつもこんな風にからかわれても動じないのに、だけどこの時はかすかに瞳を揺らした。


そして、私の傍にそっと座り小さな声でぼそりと呟く。


「混ざれるものなら混ざりたいよ、俺も」


そう言って私の手を優しく包み込んだ。


そんな彼が少し寂しげな表情なのに気が付いて、いてもたってもいられなくて起き上がる。


「ごめん、直政くん。私、もう心配かけるようなことは絶対にしないから、ごめんね」


彼がびっくりした顔をするくらい私は勢いよく何度も何度も謝った。


心配かけてしまったことがたまらなかったっていうのもある。


だけど、どうして私は彼にこんなに申し訳ないような気分になったんだろう。


会ったばかりの男の子にたやすくキスされてしまったから?


それとも、仮にも婚約者の直政くん以外の男の人のことで頭がいっぱいになってしまっていたから?


わからないよ。


その時はまだ心に小さく芽生え始めた感情がどういうものなのか、わからなかったんだ。