「音葉、君はそんなに彼のことを……」
深いため息を吐いた直政くんは目を閉じてそれからしばらく黙り込んでしまった。
私は嘘なんて全然うまくない。
だけど、直政くんを傷つけたいわけでもない。
出来ることなら、私と彼の間に波風なんて立てたくないんだ。
結局私は全然うまくやれなかった。
嘘をつくことも。
自分の気持ちをいつわることも。
やっぱり私は何にもできない、ただのお嬢様なのかな。
誰一人守ることもできないのかな。
そう思うと、自分の無力さが悲しかった。
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