だけど、焦っていてまわらない私の頭ではうまい言い訳ひとつ浮かんではこなかった。


どうしよう、どうしようって気持ちが焦るばかりで。


直政くんがこんな私の様子を見て変に思わないわけないのに。


もっとしっかりしなきゃいけないのに。


私は立ち上がって、テーブルをはさんで前の席に座る直政くんに歩み寄った。


そして、何を思ったか彼の手を自分から握った。


「お願い、直政くん、私、玲生くんには近づかないから。ちゃんと直政くんの婚約者として頑張るから、だから、だから」


「音葉、どうしたんだよ?」


彼は戸惑ったように視線を泳がせた。


そして照れくさそうに私の手を握り返す。


「……わかったよ、音葉信じるよ」


「本当?だったら玲生くんのことはそっとしておいてあげて。お願い、彼は何も悪くないからここにいさせてあげて」


どうしても信じて欲しくて、懇願するように彼をじっと見つめた。