「え、なにを?」


「音葉お嬢様を絶対に惑わせないでくださいと、変な気を起こしたら即刻出て行ってもらいますとそれはもうきつくお願いしていますから」


ばあやは自信満々に説明する。


「そ、そうなんだ。玲生くんにそこまで言ってるんだ……」


なんだか、恥ずかしいな。ばあやったら。


玲生くんだって、そこまでしつこく言われたらうんざりだろうな。


私にちょっかい出す気なんて起こらないよね。


まあ、それだけ、ばあやが私のことを心配してくれているってことだから仕方ないか。


ばあやにしたら、教育係として、そこまで完璧に私達を管理監督しているつもりだから、今回の直政くんの指摘は心外だったんだな。


もし、ばあやに嫌われたらこの家には出入り禁止になるだろうし直政くんもあんまり強くは言えなかったのかも。


「お嬢様、きっと直政さまは不安なんですよ」


ばあやはしみじみそんなことを言う。


「そうね」


「大事にしてあげてください。真面目で、不器用な方ですがお嬢様のことは昔から大切に想ってくれています」