今日から不良王子と同居します。

「音葉」


すると、突然直政くんに強く手を握られて前に引っ張られた。


びっくりしてつんのめりそうになるのを直政くんのたくましい腕に支えられる。


え?


どうしたのかな。直政くん。


こんな風に強引に手を繋いでこられたのは初めて。


見上げた直政くんはちょっと硬い表情をして眉間にはしわを寄せていて。


「神崎くん、音葉はうちの車で送っていく。君もよかったら一緒にどう?」


「俺はいいです。ひとりで帰れますから」


「そうか、助かるよ。俺も音葉とふたりきりになりたいから」


直政くんは玲生くんにきっぱりそう言ってから、私の方へ視線を向ける。


「なあ。音葉、彼に俺のことをもう少しちゃんと紹介しといてもらえないかな?なにか勘違いされてるよね」


「え、勘違いって何のこと?」


「俺は音葉のただの幼なじみなんかじゃないよな」


「あ、えっと。それは……」


確かに直政くんのいうとおり、ただの幼なじみじゃない。


彼は私の婚約者。


だけど、玲生くんにそのことはあえて告げていなかった。