だけど、玲生くんが迎えに来てくれることをあんまり言いたくなかったって言うのも正直な気持ちで。


なんとなく、彼に知られたらあまりいい顔はされないような気がしたから。


「音葉、あのさ、その手」


彼は鋭い瞳で私の右手を見る。


「へ?」


「どうしてその彼と手なんて繋いでるんだ?」


あ、そうだった。どうしよ。


この時になって玲生くんとまだ手を繋いだままだったことにようやく気が付いた。


別に深い意味なんてないつもりだったんだけど。


さっきは明日香ちゃんから逃げるようにして、彼を引っ張って歩いたってだけで。


成り行きって言うか、無意識っていうか、深い意味なんてない。


急いで、手を離そうとしたんだけどなぜか玲生くんはなかなか離してくれなかった。


「玲生くん、もう手はなそ」


「音葉さんから繋いできたんじゃん」


彼は涼しい顔で言いニヤッと笑う。


わ、まずいかも。直政くんの前でちょっと恥ずかしいよ。


「神崎玲生、音葉から手を離せよ」