彼に強引に腕を引っ張られて私はようやく立ち上がった。
「わ、音葉さん、真っ赤だ。かわいーな」
背の高い彼は上から私を覗き込むように見つめて、人差し指で頬をつついてきた。
凄く楽しそうな満足そうな顔。
「もうっ、意地悪」
「ごめんごめん、だってその顔が見たかったから。音葉さんってほんとに可愛いな」
「え、なにそれ?また私のことそんなふうにからかって。
それより簡単に連絡先を教えたりしちゃダメでしょ。あなたって人はほんとにもう……」
ブツブツ文句を言ったら彼が眉を下げて優しい顔をする。
「わかったよ、ごめん」
素直に何度も謝られたら、これ以上怒れない。
「機嫌直して」
私が片手でまだ顔を隠していたら、彼が私の顎に手を伸ばしてくる。
やたらと触れられるからドキドキしておかしくなっちゃいそう。
注意しないとって思うのに、頬が緩んじゃう私って、もうやだ。
「も、だめったらー」
「顔赤いから冷やしてあげるよ」
またからかうように私を見て笑うので、恥ずかしい。
もーこの小悪魔は……。



