『まあ、怪我をされているんですか?』
『すぐに手当てしましょう』
『こんなのかすり傷だから大丈夫ですよ』
ばあやと男の人の声。
そんなやり取りが聞こえてきてハッとした。
たいへんっ、怪我をしているって?
ランプの薄明かりで見たお客様は背の高い青年で、目が合うとにっこり笑ってくれたみたいだった。
その時は顔がまだよく見えなかったんだけど、唇の端が切れていて右手の甲からも出血しているとか。
『大丈夫ですか?何があったの?』
『……駅前で酔っ払いに絡まれて。でもたいしたことないから』
彼はそう言うけれど、大切なお客様にもしものことがあれば一大事。
『いけません、さあ早くこっちへ来て。ばあや、救急箱を持ってきて』
自己紹介もそこそこに、傷の手当てをしようと思って彼を近くの部屋に強引に引っ張って行った。
なにも言わずにおとなしくついてくる彼。
『さあ、傷を見せて。痛い?』



