ジリジリと耳元で大声を張り上げるスマホのアラームで目が覚めた。
6:30という表示からすると、一回目のアラームで起きたらしい。
低血圧の僕は6:30〜7:00までの間五分ごとにアラームを刻んでいる。
いつもは7時ギリギリに、何なら7時を過ぎて起床するのだが今日に限ってこの時間に目が覚めたのは深く眠れなかった事に他ならない。
社会人とはなんと残酷だろうか。プライベートでどんなにつらい事があろうが朝が来たらスーツに袖を通し出社をしなければいけない。
普段通りに仕事ができるだろうか、そんな不安を抱えながら酸素の薄い満員電車に乗り込んだ。
会社につき、自席に着くと同期の山本に声をかけられた。
にやけながら昨日どうだった?という彼を見て、そういえば昨日プロポーズをすると宣言したのを思い出す。
「…成功…ではないらしいな。」
「それ以上何も言わずに悟ってくれ」
今日飲みに行くぞ、とだけ言い席に戻る彼の後ろ姿を横目にPCのスイッチを入れる。
「モチベーションで仕事の質を変えるな。モチベーションが低いからと言って火を消さない消防士はいない」誰かがそんな事言ってたっけ。
そんなの綺麗事だ。人間そんなに強くない。
それとも公私をしっかりと分けられない僕が子供なのか。
1日がこんなに長く感じたのは初めてだった。
湯気とタバコの煙で少し煙った空間、鉄板の上で踊る生肉、
焼き鳥の香ばしい匂い。
キャハキャハと手を叩きながら笑う大学生の笑い声。
いつもなら胃に食べ物をたらふく食べてからグラスに手を伸ばすが今日はまず生ビールを一気に飲み干すが今日は兎に角アルコールを摂取したかった。
「おいおい、先に食べてからにしろよ。潰れたら介抱すんの俺なんだぞ。」
そう言いながらも普段より柔らかい口調に優しさを感じる。
「さぁ、どうしたよ。言えなかったか?それとも…」
そこまで言って、気まずそうに視線を僕から枝豆に移す。
「あぁ、それともの方だ。」
やっぱりなぁと言う顔をした後、頬杖をつき、眉間に皺を寄せてなんでよ、と言う。
「俺が聞きたいっつーの。3年だぞ?普通女の方が意識するんじゃないのかこういうのって。」
最も味の染み込んでそうな焼き鳥を口に運ぶ。
「んーまぁ一般的にはそうよなぁ。なんか心当たりとかない訳?」
「懸念点があったら全て潰してから売り込むのが俺のスタイルだって知ってんだろ。」
「営業スタイルを恋愛にも適用してんのな。」
「こないだ、二課の田中も彼女に振られてたろ。忘れられない人がいるとかで。なんか悪い気が溜まってるんじゃないのか、この営業部。」
『忘れられない人』という単語に五十嵐の顔が浮かんだ僕はやっぱりどうかしてるのかもしれない。
6:30という表示からすると、一回目のアラームで起きたらしい。
低血圧の僕は6:30〜7:00までの間五分ごとにアラームを刻んでいる。
いつもは7時ギリギリに、何なら7時を過ぎて起床するのだが今日に限ってこの時間に目が覚めたのは深く眠れなかった事に他ならない。
社会人とはなんと残酷だろうか。プライベートでどんなにつらい事があろうが朝が来たらスーツに袖を通し出社をしなければいけない。
普段通りに仕事ができるだろうか、そんな不安を抱えながら酸素の薄い満員電車に乗り込んだ。
会社につき、自席に着くと同期の山本に声をかけられた。
にやけながら昨日どうだった?という彼を見て、そういえば昨日プロポーズをすると宣言したのを思い出す。
「…成功…ではないらしいな。」
「それ以上何も言わずに悟ってくれ」
今日飲みに行くぞ、とだけ言い席に戻る彼の後ろ姿を横目にPCのスイッチを入れる。
「モチベーションで仕事の質を変えるな。モチベーションが低いからと言って火を消さない消防士はいない」誰かがそんな事言ってたっけ。
そんなの綺麗事だ。人間そんなに強くない。
それとも公私をしっかりと分けられない僕が子供なのか。
1日がこんなに長く感じたのは初めてだった。
湯気とタバコの煙で少し煙った空間、鉄板の上で踊る生肉、
焼き鳥の香ばしい匂い。
キャハキャハと手を叩きながら笑う大学生の笑い声。
いつもなら胃に食べ物をたらふく食べてからグラスに手を伸ばすが今日はまず生ビールを一気に飲み干すが今日は兎に角アルコールを摂取したかった。
「おいおい、先に食べてからにしろよ。潰れたら介抱すんの俺なんだぞ。」
そう言いながらも普段より柔らかい口調に優しさを感じる。
「さぁ、どうしたよ。言えなかったか?それとも…」
そこまで言って、気まずそうに視線を僕から枝豆に移す。
「あぁ、それともの方だ。」
やっぱりなぁと言う顔をした後、頬杖をつき、眉間に皺を寄せてなんでよ、と言う。
「俺が聞きたいっつーの。3年だぞ?普通女の方が意識するんじゃないのかこういうのって。」
最も味の染み込んでそうな焼き鳥を口に運ぶ。
「んーまぁ一般的にはそうよなぁ。なんか心当たりとかない訳?」
「懸念点があったら全て潰してから売り込むのが俺のスタイルだって知ってんだろ。」
「営業スタイルを恋愛にも適用してんのな。」
「こないだ、二課の田中も彼女に振られてたろ。忘れられない人がいるとかで。なんか悪い気が溜まってるんじゃないのか、この営業部。」
『忘れられない人』という単語に五十嵐の顔が浮かんだ僕はやっぱりどうかしてるのかもしれない。
